「ブラフ積み」とは

80cm×25cm×20cmぐらいの房州石(砂岩)を、各段に長辺(長手)と短辺(小口)が交互に並ぶように積む方法です。レンガの「フランドル積み」または「フランス積み」に相当します。

これは山手・桜道で見たきれいなブラフ積みです。山手だけでなく、横浜の中心部では随所に見られます。また、横浜以外では、横須賀の猿島にある要塞跡が大きなブラフ積みの遺構として知られています。

ついでに、レンガの積み方も調べてみました。

フランス積み(フランドル積み)
各段に長手と小口を交互に並べる積み方。装飾的ですが、積み方がややこしく、日本では明治20年以前の古い建物にしか見られない珍しいものです。(写真は山手プールの管理棟に復元されたもの)

イギリス積み
長手だけの段と小口だけの段を交互に重ねる積み方。フランス積みの後に多用された最もよく見られる積み方です。「オランダ積み」もこの一種でコーナーの処理が異なります。(写真は山手80番館の遺構より)

長手積み
レンガの長手だけを見せる積み方。(写真は、帝蚕倉庫ビルのレンガ壁)
小口積み(ドイツ積み)
レンガの小口だけを見せる積み方。(写真は、開港記念会館のレンガ壁)

「ブラフ積み」の名称は、昭和62年に横浜市教育委員会が発行した『横浜山手 - 横浜山手洋館群保存対策調査報告書 -』に、下記のように記述されていることから、このときに誕生した名称と思われます。この報告書にも書かれているように、この石積み方式は山手だけに見られるものではなく、古い横浜市街のほぼ全域に残存しています。また、ブラフ積みは、擁壁だけでなく護岸にも使われました。明治末に撮られた写真では、磯子区(一部、南区)の堀割川の護岸にブラフ積みが採り入れられていたことがわかります。しかし、それらは関東大震災で大きな被害を出したため、復興工事では間知石や鉄筋コンクリート造に変更されたということです。

「...これらの石垣はいわゆる西洋式の積み方と判断されるが、その出所は定かではない。また、横須賀市内や東京でも多くみかけることができ、横浜山手独自の石垣ともいいがたいが、山手全域に広範に存在し、かつ山手の特徴的な景観要素になっていることからも、<ブラフ積>と名付けることにしたい。」......『横浜山手』より


左は上述の堀割川護岸工事でブラフ積み擁壁を積んでいる石工を写した珍しい写真です。時期は明治 44 年、たき火に手をかざして暖を取っているところからすると、晩秋ごろでしょうか。

『横浜電気鉄道新線路写真帖』(横浜中央図書館所蔵)所収、「旭橋工事」(部分拡大)

(初稿2003年、2016年7月一部訂正)


余聞...

ブラフ(Bluff)」とは「」を意味する英語です。横浜に来た外国人の間では、山手は「ブラフ」と呼ばれていました。


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